
【借地借家法対応】定期借家契約と普通借家契約の違いを徹底比較
定期借家契約(定期建物賃貸借)は、あらかじめ決めた期間で契約が終わる賃貸借の仕組みです。
「短期間だけ住みたい」「転勤中の自宅を貸したい」「将来は売却や建て替えを予定している」といった場面では便利ですが、普通借家契約と同じ感覚で契約すると、更新や中途解約をめぐる行き違いが起こり得ます。
この記事では、借主・貸主・賃貸管理担当者に向けて、借地借家法上の定期借家の基本、普通借家契約との違い、メリット・デメリット、終了通知、リロケーション、滞納保証までをわかりやすく解説します。

定期借家(定期建物賃貸借)とは?読み方・借地借家法上の仕組みを解説
定期借家とは、借地借家法第38条に定められた「定期建物賃貸借」の通称です。
契約時に設定した期間が満了すると、原則として更新なしで賃貸借が終了し、借主は明け渡すことになります。
ただし、契約期間が終わった後に貸主・借主双方が合意すれば、同じ物件で新たに再契約することは可能です。
普通借家契約のように借主の希望だけで当然に更新される制度ではないため、契約の形式、期間、終了時の扱いを契約前に正確に把握することが重要です。
定期借家の読み方と、定期建物賃貸借契約の基本
「定期借家」は「ていきしゃくや」と読み、正式名称は「定期建物賃貸借契約」です。
対象は建物であり、マンションやアパート、一戸建ての居住用物件だけでなく、事務所、店舗、テナントなどにも利用されます。
最大の特徴は、期間満了により契約が終了する点です。
定期借家として有効に成立させるには、公正証書などの書面で契約を締結し、さらに契約書とは別に「更新がなく、期間満了で終了する」ことを書面で事前説明する必要があります。
この要件を欠くと、定期借家として扱われないおそれがあります。
- 正式名称:定期建物賃貸借契約
- 根拠法:借地借家法第38条
- 主な特徴:期間満了で終了し、法定更新はない
- 対象:居住用住宅、店舗、事務所、テナントなど
- 重要な成立要件:書面契約と、別書面による事前説明
普通借家契約との違いは「更新」ではなく期間満了で終了する点
定期借家と普通借家の本質的な違いは、契約期間が来た後の扱いにあります。
普通借家契約では、借主が引き続き住みたいと希望する場合、貸主は正当事由がなければ更新を拒絶しにくい仕組みです。
一方、定期借家では、期間満了で契約は終了します。
貸主が自宅に戻る、建物を建て替える、売却するなどの予定がある場合でも、満了時の明け渡しを前提に計画を立てやすい点が特徴です。
ただし、再契約を予定している場合であっても、それは更新ではなく、新条件での新たな契約であることを理解しておきましょう。
居住用・店舗・テナントで活用される定期借家制度
定期借家制度は、利用目的が明確で期限を区切りたい物件に適しています。
居住用では、海外赴任や転勤の間だけ自宅を貸すリロケーション、相続した空き家の活用、将来的な親族の居住を予定する住宅などで活用されます。
事業用では、再開発までの暫定利用、催事に合わせた期間限定店舗、退店時期を見通したテナント契約などが代表例です。
一方で、借主にとっては長期居住の安定性が低くなるため、募集条件では契約満了日、再契約の可能性、再契約料の有無を明示することが賃貸管理上も大切です。
| 活用場面 | 定期借家が向く理由 | 主な注意点 |
|---|---|---|
| 転勤・海外赴任中の自宅 | 帰任時期に合わせて明け渡しを予定しやすい | 帰任予定の変更時も再契約は双方の合意が必要 |
| 建て替え・売却予定の住宅 | 将来の計画に合わせて賃貸期間を区切れる | 終了通知の要否と時期を管理する |
| 店舗・テナント | 再開発や事業計画に合わせた利用ができる | 造作、原状回復、途中解約の特約を明確にする |
定期借家契約と普通借家契約の違いを比較表で整理
定期借家契約と普通借家契約は、契約期間を定める点だけを見ると似ていますが、更新、契約締結の手続き、賃料改定、中途解約などに重要な差があります。
特に「定期だから必ず退去」「普通なら必ず更新」という理解だけでは不十分です。
実際には、定期借家でも再契約は可能であり、普通借家でも定期借家でも契約条項によって中途解約の可否や違約金が異なります。
借主は住み続ける見通しを、貸主は将来の物件活用計画を基準に、契約種別と個別条項を合わせて比較してください。
| 比較項目 | 定期借家契約 | 普通借家契約 |
|---|---|---|
| 契約終了 | 原則として期間満了で終了する | 更新されることが前提となりやすい |
| 更新 | 更新はなく、続ける場合は再契約 | 合意更新または法定更新があり得る |
| 契約期間 | 1年未満の短期契約も可能 | 1年未満は期間の定めのない契約とみなされる |
| 締結方法 | 書面契約と別書面での事前説明が必要 | 定期借家特有の事前説明は不要 |
| 賃料増減 | 増減請求をしない特約を置ける | 法定の増減額請求権を排除しにくい |
契約期間・更新・再契約・明け渡しの違い
普通借家契約では、期間を定めた場合でも、借主保護の観点から更新が認められやすく、貸主が終了を求めるには正当事由が問題となります。
これに対して定期借家は、満了日が到来すれば契約が終了し、借主は原則として明け渡さなければなりません。
もっとも、定期借家で再び借りたい場合、貸主が承諾すれば再契約できます。
再契約では賃料、契約期間、敷金の精算や引継ぎ、再契約料などを改めて定められるため、初回契約時に「再契約可」と書かれていても、無条件で居住を継続できる意味ではありません。
契約書面の交付と事前説明:定期借家契約の成立要件
定期借家契約は、口頭合意だけでは成立しません。
借地借家法第38条により、公正証書その他の書面で契約を締結することが必要です。
さらに貸主は、契約締結前に、借主へ「この契約には更新がなく、期間満了により終了する」旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません。
この事前説明は契約書内の条項だけで済ませず、契約書とは別個の書面で行うことが実務上重要です。
要件に不備がある場合、定期借家ではなく普通借家契約として扱われる可能性があるため、貸主側は賃貸管理会社と連携して証跡を保管しましょう。
- 賃貸借契約は必ず書面で締結する
- 契約前に、更新がなく期間満了で終了する旨を書面で説明する
- 説明書面の交付日、借主の受領確認、署名または記名を残す
- 契約書、重要事項説明書、説明書面の内容に矛盾がないか確認する
賃料の増減請求権・更新料・特約の扱いの違い
普通借家契約では、税負担、土地建物価格、経済事情などが変動し、賃料が不相当となった場合、当事者には借地借家法第32条に基づく賃料増減額請求権が認められます。
これに対し定期借家契約では、賃料を増額しない、または減額しない旨の特約を有効に設けることができます。
また、定期借家には更新がないため、通常は更新料の問題は生じませんが、再契約料を定めるケースはあります。
借主は再契約時の費用と賃料見直しのルールを、貸主は特約の有効性と説明の明確さを、契約書で確認する必要があります。
定期借家契約期間は何年まで?短期契約・期間満了通知のルール
定期借家契約の期間には、普通借家契約のような最低1年という制限がありません。
数か月だけの短期契約から、数年単位の契約まで、当事者の合意により柔軟に設定できます。
ただし、契約期間が1年以上の場合、貸主は原則として満了の1年前から6か月前までの間に、借主へ終了通知を行う必要があります。
通知を忘れると、期間満了日を過ぎても直ちに明け渡しを請求できない場合があるため、賃貸管理では満了日の管理と通知記録の保存が不可欠です。
契約期間は自由に定められるが、期間満了で賃貸借契約は終了
定期借家契約は、1年未満でも有効に期間を定められます。
例えば、3か月、6か月、10か月といった短期の賃貸借も可能であり、転勤の期間や工事予定に合わせた設計ができます。
普通借家契約で1年未満の期間を定めた場合は、原則として期間の定めがない契約とみなされる点と大きく異なります。
定期借家では、契約期間が満了すれば賃貸借は終了します。
期間を延長したいときは、契約書の内容を確認したうえで再契約を行うのが基本であり、自動延長と誤解しないよう注意が必要です。
1年以上の定期借家で必要な終了通知の時期と方法
契約期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に、借主へ契約が終了する旨を通知しなければなりません。
この通知は、借主に退去時期を認識させ、住み替えの準備期間を確保するための重要な手続きです。
適法な通知がない場合、貸主は通知後6か月を経過するまで、終了を借主に対抗できません。
配達証明付き内容証明郵便など、到達を確認しやすい方法を用い、通知書の写し、発送記録、受領記録を保管すると安心です。
なお、契約期間が1年未満の場合、この終了通知の規定は適用されません。
| 契約期間 | 終了通知 | 管理上の対応 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 借地借家法第38条の終了通知は不要 | 満了日と退去日を事前に案内する |
| 1年以上 | 満了の1年前から6か月前までに必要 | 期限管理、到達確認、記録保管を徹底する |
| 通知が遅れた場合 | 通知後6か月経過まで終了を対抗できない | 明け渡し予定と次の募集計画を見直す |
一時的な転勤・建て替え・リロケーションで短期間に貸すケース
リロケーションとは、転勤や海外赴任などで一時的に自宅を離れる所有者が、帰任までの間に住宅を賃貸する運用です。
帰任後には自宅へ戻る予定があるため、期限を区切って貸せる定期借家は相性のよい契約形態といえます。
また、建物の建て替え、売却、相続後の処分時期が決まっている場合にも、空室のままにせず賃料収入を得る方法として検討できます。
ただし、帰任や工事の時期が変わる可能性、家具・設備の扱い、修繕責任、再契約の条件などを事前に明確にし、借主へ過度な期待を持たせない募集・説明が必要です。
定期借家のメリット・デメリットを貸主・借主別に比較
定期借家は、貸主にとって将来の物件利用を予定しやすい一方、借主にとっては居住継続の確実性が低い契約です。
どちらが有利かは一律には決められず、契約期間、賃料水準、再契約の可能性、引っ越し費用、物件の利用目的によって判断が変わります。
貸主は空室リスクや再募集の負担を、借主は満了時の住み替えリスクを具体的に計算することが重要です。
契約形態だけで決めず、普通借家契約との条件差を比較して選びましょう。
| 立場 | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|
| 貸主 | 将来の自己使用、売却、建て替えの予定を立てやすい | 満了ごとの再募集や空室発生のリスクがある |
| 借主 | 賃料が相場より低い物件や好条件の物件を選べる場合がある | 満了時に退去が必要で、長期居住には不向きな場合がある |
貸主・大家さんのメリット:期限を定めて空き家や賃貸物件を活用できる
貸主・大家さんにとっての最大のメリットは、物件をいつまで貸すかをあらかじめ定められることです。
転勤から戻った後に自宅へ住む、相続不動産を一定時期に売却する、老朽化した建物を建て替えるなど、将来計画がある物件でも賃料収入を得ながら活用できます。
普通借家契約では、貸主都合で契約を終了させるには正当事由が必要となり得ます。
定期借家なら満了を前提に募集できるため、明け渡し時期を軸に資金計画、修繕計画、売却活動を進めやすい点が実務上の強みです。
- 帰任後の自宅利用日を見据えて貸し出せる
- 売却・建て替え・大規模修繕の時期を計画しやすい
- 相続した空き家を放置せずに活用できる
- 店舗やテナントの暫定利用にも対応しやすい
貸主のデメリット:再契約の募集・賃貸管理と空室リスクが発生する
定期借家では、期間満了時に借主が退去すれば、次の入居者を探すための募集、内見対応、原状回復、契約事務が必要になります。
借主が再契約を希望しても、貸主が条件を変更する場合には調整が必要であり、合意に至らなければ空室となります。
短期契約を繰り返す運用では、仲介手数料、広告費、清掃費、賃貸管理の工数がかさむ可能性があります。
また、定期借家であることを十分に説明しないと、借主が更新できると誤認し、満了時のトラブルにつながります。
募集図面、重要事項説明、契約書、終了通知の内容を一貫させることが不可欠です。
借主のメリット:相場より家賃・賃料が抑えられる可能性
借主にとっては、契約期間が限定される代わりに、周辺相場より賃料が抑えられている物件を見つけられる可能性があります。
分譲マンションや戸建てなど、通常なら賃貸市場に出にくい物件がリロケーションで募集されることもあり、設備、広さ、立地の面で条件のよい住まいを選べる場合があります。
数か月から1年程度の居住予定が明確な人にとっては、短期利用に対応できる点もメリットです。
ただし、家賃だけでなく、再契約料、引っ越し費用、満了後の住居費まで含めた総額で判断する必要があります。
借主のデメリット:住み続けられず、満了時に物件探しと退去が必要
定期借家の借主は、原則として契約期間が満了すると退去しなければなりません。
子どもの進学、勤務先への通勤、介護、地域コミュニティーなどの理由で長く住みたい人にとって、住み替えが必要になる負担は小さくありません。
再契約が可能と案内されていても、貸主の帰任、売却、賃料改定などにより継続できないことがあります。
また、契約期間の途中で転勤や家族構成の変化があっても、普通借家より中途解約が制限されるケースがあります。
満了日と中途解約条項を確認し、退去時期に合わせた住み替え計画を立てましょう。
定期借家はやめたほうがいい?借主が契約前に確認すべき注意点
定期借家が「やめたほうがいい」契約になるかは、借主の居住予定と契約内容次第です。
数年後の退去を受け入れられない人、子どもの学区を変えたくない人、転居費用を抑えたい人には慎重な検討が求められます。
反対に、住む期間が決まっている人や、条件のよい物件を期間限定で借りたい人には合理的な選択肢です。
広告の「再契約可」という表現だけを信用せず、再契約の条件、中途解約、違約金、終了通知、明け渡し日を契約前に書面で確認してください。
再契約は可能でも保証されない:条件・賃料・家賃改定を確認
定期借家では、満了後も同じ物件に住み続けられる場合がありますが、それは更新ではなく再契約です。
再契約には貸主・借主双方の合意が必要であり、貸主が自己使用や売却を予定していれば、借主が希望しても断られることがあります。
また、再契約時には賃料、管理費、契約期間、敷金、礼金、再契約料などが変更される可能性があります。
借主は、再契約の可否、判断時期、費用、賃料改定の基準を確認しましょう。
貸主側も、安易に継続居住を約束する説明を避け、再契約は保証されないことを明確に伝える必要があります。
中途解約・途中解約は原則不可?借主から解約できる条件
定期借家では、契約期間の途中で借主が自由に解約できるとは限りません。
まず契約書に中途解約条項があるかを確認し、解約予告期間、違約金、短期解約違約金の有無を把握してください。
床面積が200平方メートル未満の居住用建物で、転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情により生活の本拠として使用することが困難になった場合、借主には借地借家法上の中途解約権が認められます。
この場合、借主が解約を申し入れてから1か月で契約は終了します。
ただし、事業用物件や広い住宅では同じ扱いにならないため、個別の契約内容を確認しましょう。
特約、違約金、明け渡し期限、退去予告を契約書で確認する
定期借家契約では、満了退去だけでなく、途中解約、原状回復、設備故障、ペット、法人契約などに関する特約が実務上重要です。
特に借主は、退去予告が何日前か、満了日に退去できない場合の扱い、違約金が発生する条件、クリーニング費用の負担範囲を確認してください。
貸主は、消費者契約法や借地借家法に照らして一方的に不利な条項となっていないかを確認する必要があります。
不明確な特約は満了時の紛争を招くため、金額、期限、手続き、負担者を具体的に記載し、口頭説明だけで済ませないことが大切です。
知恵袋で多いトラブルを回避するためのチェックポイント
インターネット上の相談では、「更新できると思っていた」「終了通知が届いていない」「再契約料が高額だった」「途中退去で残りの家賃を請求された」といった定期借家の悩みが多く見られます。
こうしたトラブルは、契約形態の誤認と書面確認不足が主な原因です。
借主は、契約前に満了日と退去条件をカレンダーに登録し、説明書面と契約書を保管しましょう。
貸主・管理会社は、定期借家である旨を募集時から明示し、終了通知を適切な時期に到達確認できる方法で送ることが予防策になります。
- 契約が定期借家か、普通借家かを契約書と説明書面で確認する
- 満了日、再契約の可否、再契約料、賃料改定の条件を確認する
- 中途解約の可否、解約予告、違約金を確認する
- 終了通知の送付時期と送付先を確認する
- 口頭の説明や約束は、メールなどの記録も残す
貸主が定期借家を選ぶべきケースと普通借家が向くケース
貸主が定期借家を選ぶべきか、普通借家を選ぶべきかは、物件をいつまで、どのように活用したいかによって決まります。
数年後の自己使用、売却、建て替えといった明確な出口戦略があるなら、定期借家は有力な選択肢です。
一方で、長期入居者を確保して安定収入を得たい場合は、普通借家契約のほうが募集上の受け入れられやすさを期待できます。
契約形態を選ぶ前に、収支だけでなく、空室期間、募集コスト、入居者層、管理対応、将来の事業計画を総合的に比較しましょう。
転勤・海外赴任・将来の自宅利用を予定したリロケーション
転勤や海外赴任で自宅を一時的に離れる場合、帰任後にその家へ戻る予定があるため、定期借家によるリロケーションが適しています。
空室のまま維持費だけを負担するより、賃料収入で住宅ローン、管理費、修繕費の一部をまかなえる可能性があります。
ただし、帰任時期は変更されることがあるため、契約期間を長く設定しすぎないこと、再契約の扱いを明確にすることが大切です。
家具付きで貸す場合は、残置物と設備の区分、故障時の修理負担、退去時の確認方法も契約書や付帯設備表に記載しましょう。
建て替え・売却・相続を見据え、賃貸経営の期限を確定したい場合
建物の老朽化により数年後の建て替えを予定している場合や、相続した不動産を売却するまでの間だけ運用したい場合にも、定期借家は活用できます。
普通借家で長期入居者がいると、計画どおりに明け渡しを受けられず、売却や工事のスケジュールに影響する可能性があります。
定期借家では満了日を基準に計画を立てやすいため、事業の見通しを確保しやすくなります。
もっとも、満了直後に必ず退去が完了するとは限らないため、終了通知、退去立会い、原状回復、残置物対応に必要な期間も含めて余裕ある工程を組む必要があります。
長期入居者を確保したいなら普通借家契約を検討する
長期にわたり安定した家賃収入を得たい貸主や、ファミリー層を主なターゲットにする物件では、普通借家契約が向く場合があります。
定期借家は退去時期が決まっているため、入居希望者が限られ、賃料を下げなければ募集が難しいこともあります。
普通借家であれば、借主は長く住みやすく、貸主は再募集や原状回復の頻度を抑えられる可能性があります。
将来の自己使用や売却予定が特にないなら、定期借家にする必要性は高くありません。
物件の需要、地域特性、想定入居者、保有方針を踏まえて、収益と管理負担のバランスを検討してください。
定期借家契約の締結から終了まで:賃貸管理の実務手続き
定期借家を適切に運用するには、契約時だけでなく、募集、入居中、満了前、退去後まで一貫した賃貸管理が必要です。
とくに定期借家は、書面による事前説明、終了通知、再契約の判断といった普通借家にはない、または重要度が異なる手続きがあります。
これらを怠ると、定期借家としての扱いが争われたり、明け渡し時期がずれたりするおそれがあります。
貸主自身で管理する場合も管理会社へ委託する場合も、期限を管理表やシステムで共有し、書類と送付記録を確実に保存しましょう。
契約前:定期借家である旨の説明書面と賃貸借契約書を準備
契約前の実務では、募集広告の段階から「定期借家契約」であること、契約期間、再契約の可否を明記することが重要です。
内見時や重要事項説明時にも、普通借家の更新契約ではないことを借主へわかりやすく伝えます。
契約締結時には、書面による賃貸借契約書に加え、更新がなく期間満了で終了する旨を記載した別書面を交付して説明します。
契約書には、満了日、賃料、敷金、再契約条件、中途解約、原状回復、付帯設備、禁止事項を具体的に定めましょう。
説明を行った証拠として、説明書面の受領署名や交付記録を保管することも欠かせません。
- 募集図面に定期借家であることと契約期間を表示する
- 書面で賃貸借契約を締結する
- 契約書とは別に、更新がなく満了で終了する旨の説明書面を交付する
- 再契約の可否や条件を曖昧にせずに記載する
- 借主の受領確認、説明日、署名などの証跡を保存する
契約中:賃料滞納保証、入居者対応、再契約の可否を管理する
契約中は、普通借家と同様に賃料の入金管理、設備不具合への対応、近隣トラブルの防止、更新に代わる満了管理を行います。
賃料滞納に備えるには、入居審査を適切に実施したうえで、家賃債務保証会社の滞納保証を利用する方法が有効です。
保証の対象範囲は、月額賃料だけでなく、共益費、原状回復費、明渡し訴訟費用などで異なるため、保証委託契約の内容を確認してください。
また、満了のかなり前から、貸主が再契約を希望するか、借主に継続意向があるかを確認すると、再募集や退去準備を円滑に進められます。
| 管理項目 | 主な実務内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 賃料管理 | 入金確認、督促、滞納保証の利用 | 滞納初期から保証会社と連携する |
| 入居者対応 | 設備修理、苦情対応、契約違反の確認 | 対応履歴を記録し、口頭対応のみで終えない |
| 再契約判断 | 貸主の将来計画と借主の継続希望を確認 | 再契約を約束したと誤解されない説明をする |
| 満了管理 | 通知期限、退去日、募集開始日を管理 | 通知漏れがないよう複数人で確認する |
契約終了:期間満了通知、退去・明け渡し、原状回復の手続き
契約期間が1年以上の定期借家では、貸主は満了の1年前から6か月前までの間に終了通知を行います。
通知後は、借主と退去日、立会い日、鍵の返却方法、ライフラインの停止、残置物の有無などを調整します。
明け渡し時には、入居時の写真、チェックリスト、設備表をもとに室内を確認し、通常損耗と借主負担となる損耗を区分して原状回復費を精算します。
敷金を預かっている場合は、未払賃料や適正な原状回復費を控除したうえで返還します。
次の募集、売却、自己使用、工事へ円滑につなげるため、退去後の清掃・修繕計画も早めに準備しましょう。
定期借家と普通借家契約、どちらを選ぶ?失敗しない判断基準
定期借家と普通借家の選択では、「契約期間が何年か」だけでなく、満了後の生活や物件利用を具体的に想定することが重要です。
借主は、満了日に退去しても問題ないか、再契約できなかった場合に住み替えられるかを考えます。
賃貸人は、物件を長期保有するのか、自己使用・売却・建て替えを予定しているのかを整理します。
両者とも、契約種別の名称だけで判断せず、契約書、説明書面、特約、賃料条件、管理体制まで確認することで、後悔やトラブルを減らせます。
借主は居住予定期間、住み替えの可能性、再契約条件で比較する
借主が定期借家を選ぶ際は、まず自分と家族がその物件に何年住む予定かを整理してください。
転勤予定、進学、結婚、出産、介護などにより、満了時期と生活設計が合うなら定期借家は選択肢になります。
一方で、満了後も同じ地域・学区に住み続けたい場合は、普通借家契約のほうが安心できることがあります。
比較時には月額家賃だけではなく、礼金、仲介手数料、再契約料、更新料、引っ越し費用、次の住まいを探す負担を含めて検討しましょう。
再契約可の物件でも、保証ではないことを前提に判断することが大切です。
賃貸人は物件の活用目的、将来計画、管理負担で選択する
賃貸人は、物件の出口戦略と賃貸経営の方針を明確にしたうえで契約形態を選びます。
帰任後に住む、一定時期に売る、建て替えるなどの明確な予定があれば、定期借家によって満了日を基準とした運用をしやすくなります。
長期保有を前提とし、安定入居と再募集コストの抑制を重視するなら、普通借家契約が適する場合があります。
定期借家を選ぶ場合は、終了通知、再契約交渉、退去立会い、空室対策などの管理負担も考慮してください。
賃料設定、滞納保証、管理会社の対応範囲を含めた収支計画を作ると判断しやすくなります。
判断に迷う場合は不動産会社・弁護士など専門家に相談する
定期借家は借地借家法の要件を満たして初めて適切に機能するため、書面や特約の作成に不安がある場合は専門家へ相談しましょう。
不動産会社や賃貸管理会社には、地域の募集賃料、定期借家の需要、入居者募集の方法、滞納保証商品の選び方を相談できます。
終了通知、再契約拒絶、明渡し、賃料増減、特約の有効性など、法的な判断が必要な問題は弁護士への相談が有効です。
契約前に費用と手間をかけて確認することが、満了時の大きな損失や紛争を防ぐ近道です。
借主・貸主の双方が契約内容を理解し、書面で認識をそろえたうえで契約を締結してください。